6.4 ユニタリ性と正規化条件

ユニタリ性が生成汎関数の正規化条件として現れ,それが成分の恒等式とR/A/K表示の下三角構造(因果性)を支えることを示す.

前節までで,閉時間経路と $R/A/K$ 分解により,因果性が行列構造として実装されることを見た.この形式が「何も仮定していないのに危うくならない」理由はどこにあるのか.答えはユニタリ性にある.時間発展がユニタリであることは,Schwinger–Keldysh形式では生成汎関数の正規化条件として現れ,成分の恒等式や下三角構造を支えている.

ユニタリ性の内容

時間発展演算子のユニタリ性

$$\begin{align} U^\dagger(t,t_0) U(t,t_0)=\mathbf 1 \end{align}$$

は,「前進して後退すれば元に戻る」という当たり前の事実を表す.閉時間経路では,前進枝と後退枝が互いに打ち消し合うことに対応する.

生成汎関数と正規化条件

両枝に独立な外場(ソース) $J^\pm(t)$ を導入し,生成汎関数を

$$\begin{align} Z[J^+,J^-] = \mathrm{Tr}\left( \rho_0 T_{\mathcal C} \exp\left[ -i\int_{\mathcal C} dt \bigl(H(t)-J(t)B(t)\bigr) \right] \right) \end{align}$$

と定義する.両枝で同じ外場をかける

$$\begin{align} J^+(t)=J^-(t)\equiv J(t) \end{align}$$

とき,ユニタリ性から

$$\begin{align} Z[J,J]=1 \end{align}$$

が成り立つ.これは単なる規約ではなく,「両枝で同じ操作をしても観測されない」という量子力学の基本構造の反映である.

cl/q 基底(直感)

正規化条件はしばしば

$$\begin{align} J_{\mathrm{cl}}=\frac{J^++J^-}{2},\qquad J_{\mathrm{q}}=J^+-J^- \end{align}$$

という組で理解される.$J_{\mathrm{q}}=0$ なら $Z=1$ であり,「差(quantum)だけが効く」という見通しが得られる.この「差だけが応答を生む」構造が,因果性の下三角構造とも深く結び付いている.

Green関数レベルでの帰結

生成汎関数の正規化は,Green関数の成分にも恒等式として現れる.例えば $+,-$ 基底の4成分は常に

$$\begin{align} G^{++}+G^{--}=G^{+-}+G^{-+} \end{align}$$

を満たし,独立成分が3つに減る.この恒等式があることで,$R/A/K$ 表現で左下成分がゼロになる下三角構造が必然になる.

まとめ

  • Schwinger–Keldysh形式の基礎にあるのはユニタリ性である.
  • ユニタリ性は生成汎関数の正規化条件 $Z[J,J]=1$ として現れる.
  • 正規化条件は成分の恒等式を生み,独立自由度の数や因果構造(下三角行列)を支える.

次節では,この形式が「平衡を仮定しない」だけでなく,時間並進対称性や弱結合といった多くの仮定を含まないことを明確にし,Keldysh形式の一般性を整理する.


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